神戸児童間性暴力研究会は、「公益財団法人日本生命財団」から 児童・少年の健全育成助成(実践的研究助成)を受け、「『児童間性暴力“ゼロ”のためのロードマップ』策定に関する研究」を実施することになりました。

  代表研究者は2017年2月に、児童養護施設、児童相談所等の実務者および研究者で構成される「神戸児童間性暴力研究会」(以下、「性暴研」。)を立ち上げ、性暴力のない施設を目指し、調査、研究、実践活動を行っている(https://www.kobeseibouken.com/)。2018年10月からは三菱財団社会福祉研究助成を受け、「児童養護施設等、入所型児童福祉施設における児童間性暴力の予防・発見・対応が包括された実践的(多職種連携)モデル研究」(以下、「前研究」。)を行い、児童間性暴力が発生した全国の施設に対して量的、質的調査を実施し、児童間性暴力の詳細なデータを収集、分析し、その実態を明らかにしてきた。さらに、前研究において、児童間性暴力の要因には、児童の特性のみならず、性暴力を強化する施設システムが存在することが示唆され、性暴力を最小化するためには、ハイリスク児童のケアと施設システムの変革を目指す戦略的アプローチが必要なことが分かってきた。前研究では、その戦略的アプローチのプロセスと「骨組み」を体系化するに留まったが、本研究では、そのプロセスの各段階(ステップ)において実施する個別のプログラムを開発あるいは構造化(肉付け)し、実践モデル(児童間性暴力“ゼロ”のためのロードマップ)を可視化(ハンドブックとして公刊)したいと考えている。実践モデルは現場で活用されてこそ意味あるものとなるため、実効性の評価や意見聴取のためのシンポジウム、ロードマップ推進のための実践講座も並行して行うものとしたい 。

研究の方法、内容(詳細に記入)

本研究は児童養護施設・児童相談所等の実務者と研究者が協働して行う実践研究であり、臨床において活用できる方法論を提示し、それを施設・機関で作り替え(カスタマイズ)た上で実践場面に導入し、その効果を測定しようとするものである。本研究は、修正型デザインアンドデベロップメント:M-D&D(Modified Design & Development)(芝野松次郎:2015)の手続きにのっとり実施していく。M-D&Dは、実践現場で活用することを前提とした実践モデルの開発の手続きであり、「フェーズ1:問題の把握と分析」→「フェーズ2:たたき台のデザイン」→「フェーズ3:試行と改良」→「フェーズ4:普及と誂え」という4段階で構成される。性暴研では前研究において、フェーズ2の初期的段階である実践モデルの構造(骨組み)までを策定しており、本研究期間においてその構造の内容部分を開発し、実践モデルとして試行するまでを行いたい(フェーズ3中期)。

 本研究で開発する実践モデルは、以下のとおりである。(研究プロセスは図1のとおり)

・各ステップおいて実施する具体的なプログラムおよび各ステップで使用するツール(テキストや様式など)を体系化したロードマップ

・ロードマップ(汎用版)を各施設でカスタマイズし、実行するための方法を体系化した導入プログラム


A:エビデンスを抽出する目的で、施設職員に対するアンケート調査、児童間性暴力を対応した経験を有する職員に対するインタビュー調査(半構造化インタビュー)、先駆的なモデル調査、エキスパートに対するフォーカス・グループ・インタビュー(以下、「FGI」。)を実施する。
B:調査で得られた各データを分析するとともに、調査によって浮かび上がった「臨床の知」(現場レベルの工夫)などを整理し、各ステップにおいて有効と思われるプログラムとして提示し、ロードマップとして体系化する。さらに、ロードマップのカスタマイズ(自施設に適合するための改変)・実行のための方法・活用できる資源などを明示した導入プログラムを開発する。
C:シンポジウム、施設職員等へのインタビューを通してロードマップを評価する共に、実効性の担保を確認するため実践講座(研修)を実施した上で、複数の施設で試験導入する。

私たちは施設における児童間性暴力の要因には、児童の特性のみならず、性暴力を強化する施設システムが存在していると考えています。また、性暴力を最小化するためには、児童へのケアと施設システムの変革を目指す戦略的アプローチが必要であると考えています。今後は、実践モデルとして「児童間性暴力“ゼロ”のためのロードマップ」の作成を目指しています。施設の皆さんとともに、ロードマップを作成し、現場で活用できるものにしたいと考えています。

本研究にご協力いただける施設を募集しています。性暴力ゼロを目指した取り組みを本研究会と共にしていただける施設がありましたら性暴研事務局([email protected])までご連絡下さい。